Yamachiku Incuvation Laboratory
コミュニティスペース 2023
ヤマチク第一工場に併設された既存の事務所と塗装場のリノベーションプロジェクト。
事務所を、ヤマチクのギャラリー、レクチャーやミーティングスペース、さらに社員が日常的に利用できる休憩スペースとして、多目的に活用できるコミュニティスペースの計画が求められた。また、隣接する塗装場をファクトリーツアーで見学できるようにすることも重要な要件であった。
まず、コミュニティスペースと塗装場を隔てていた壁を取り払い、ガラスで仕切ることで視覚的な一体感を持たせた。ガラスの方立はお箸をモチーフにした溝を刻み、遊び心を加えた。オープンで透明感のある空間により、働く人々の自然なコミュニケーションを促進することを意識した。
コミュニティスペースは、白とグレーを基調にしたニュートラルなインテリアとし、工場の雰囲気とは全く異なる空間とした。その中で、ヤマチクのお箸のブランドカラーであるホワイトベージュとオレンジを空間全体に取り入れた。社員が日常的に使う場所であるため、シナ合板の柔らかな色味と丸みを帯びた什器が空間に優しさをもたらし、オレンジ色のスツールやソファがアクセントとして活気を与えるようにバランスを図った。
塗装場は長年の使用による劣化が進んでいたため、全てのラワン合板を張り替え、換気設備や照明も再計画することで、作業環境の改善を図った。ファクトリーツアーでは、ガラス越しにこの塗装工程を見学することができる。
真っ白なコミュニティスペースと、合板張りの塗装場という対照的な空間を並べることで、ガラス越しに見える塗装場が舞台のように感じられる。空間の対比によって主客の視覚的な反転を生み出し、ギャラリーとしての演出効果をもたらしている。
工場の一角に、新しい出会いや創造的な時間が生まれる場として、この空間が認識されることを目指し、外観は真っ白な板金仕上げとし、周囲から際立つ存在感を与えた。日常的な使いやすさと、非日常を演出するデザイン性を両立させ、シンプルでありながら温かみのある空間を実現した。
建築概要
所在地:熊本県南関町
構造:鉄骨造平屋 改修
延床面積:85.82㎡
竣工:2023. 12
クライアント:株式会社ヤマチク / 山崎彰吾
設計監理:阿部悠子設計アトリエ / 阿部悠子
施工管理:永松建設 / 永松隆介
クリエイティブディレクター:佐藤かつあき
撮影:白木世志一、山本勇